「それで?蒼さんは兄さんに何やっているんですか」
私に向ける笑顔は幻だったのか、と思えるほど冷えた表情で朱が蒼を見据える。
私以外には基本冷たいのが朱である。
「にんじんを食べてあげていたんだよ。残りのにんじんも食べる予定だから」
「そうですか。でももう食べなくても結構です」
冷たい朱に臆することなく蒼もどこか冷たい笑顔を朱に向ける。
2人の視線がぶつかって火花がバチバチと立っている気がするんだが気のせいだろうか。
「何で食べなくてもいいの?紅にとって悪くない話だと思うけど。ねぇ、紅?」
「まぁ食べてもらえるのは有り難いかな…」
「だったら僕が食べるよ?」
「え」
私には可愛らしく微笑む朱の発言に私はまたまた驚く。
今日は誰かに驚かされてはがりだ。
「何でそこで朱が俺のにんじんを食べることになるの?」
シンプルに疑問しかない。
そう思って朱を見つめると朱は可愛らしく笑ったままこう言った。
「兄さんを甘やかす存在は僕だけでいいからだよ」
つまりどういうことだ。
よくわからずに黙ったまま朱を見つめていると今度は蒼がにっこりと笑って口を開いた。
「ふーん。なるほどねぇ」
意味深な視線を蒼は朱から私に向ける。
「でもどうせ甘えるなら年下じゃなくて頼れる年上の方がいいよね?」
そして何故か甘く微笑まれた。
何故、彼は背後に花を背負っているのだろう。
「そんなことありません。兄さんは家族で1番自分のことを理解している僕に甘えたいはずです」
「いやいや。弟に甘えたい兄なんている?弟にはやっぱりしっかりしたところを見せたいはずだよ?」
「しっかり?僕の兄さんが?兄さんの生活は僕が回しているようなものですよ?あり得ません」
「それってお節介ってやつじゃない?」
「違います」
私に向けるものとは違う表情で朱と蒼が言い合っている。
お互い笑い合っているが、目が笑っていない。



