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朝。
窓の外は嫌になる程いい天気で朝日が眩しい。
「うぅ…」
私は朝日を恨めしく思いながらも朱と食堂へ向かっていた。
昨日の任務も遅かった為、とても眠たい。
本当は朝食なんて食べずにギリギリまでずっと寝ていたいが、今日も学校を始め、夏祭りの任務や姫巫女の護衛などでスケジュールがいっぱいだ。
朝食を抜いてエネルギー不足になる訳にはいかない。
昼食だって落ち着いて食べられるかわからないのだから頑張って起きて食べるしか選択はないのだ。
「兄さん大丈夫?」
「…あんまり大丈夫じゃない。寝たい」
「やっぱり?僕が起こしに行かないと寝てたもんねぇ」
「…うん」
クスクスと愛らしく笑っている朱も私ほどではないとはいえ、ハードなスケジュールをこなしているはずなのにどうしてこんなにも朝から元気なのだろう。
しかも一年生で慣れないことばかりなはずなのに。
「朱はすごいね」
「へへ。兄さんにそう言われると嬉しいな」
朱のことを心の底から褒めると朱は嬉しそうに笑った。
可愛らしいな、朱は。
「兄さんもうすぐ食堂だよ。そろそろその可愛い顔はやめてね」
「はーい」
朱の言う〝可愛い顔〟とは私のこの寝ぼけた顔らしい。
前言われた時に本人に教えてもらった。
この寝ぼけた顔は特に女の子らしく見えるとか。
性別バレは絶対にNGなので眠たいが気を引き締め、顔にも気合いを入れる。
「よし」
これで葉月家次期当主、葉月紅様の完成だ。
朱と食堂に入って今日のメニューをカウンターから受け取る。
それをテーブルに運ぶと朱と私は隣同士で朝食を食べ始めた。
「あ」
朱が突然何か思い出したかのように声を出す。
「あったかいお茶忘れちゃった」
朱の視線の先は自分と私のお盆。
そこにはいつも置かれている温かいお茶がなかった。
2人揃って忘れていたみたいだ。



