「…あ、蒼くん!今度の護衛の時でいいからさ!着物一緒にどれがいいか考えてくれる?」



何も言わない蒼にとうとう痺れを切らした姫巫女は自分から自分の要求を蒼に伝えた。

すると蒼はいつものあの笑顔で「もちろん。アナタが望むなら」と答えていた。


いやいや王子様じゃん。顔綺麗すぎじゃね?



「紅にも着物着てもらいたかったなぁ」

「は?」



姫巫女と話していたのに、蒼が急に私に話を振る。
それもとんでもない内容の。



「…俺が着物を着るわけないでしょ。似合わないから」

「いやいや。絶世の美少年と名高い紅なら着物も着こなせるでしょ?」

「…無理だよ」

「いけるいける。何なら今度うちに来ない?春名家の着物いろいろ着てみてよ」

「…意地悪してる?」

「まさか」



相変わらず何を考えているわからない蒼の笑顔に疑いの視線を送る。

てか、姫巫女にも注意したけど、蒼の発言も下手したら女バレに繋がる可能性があるよね?

頼むよ、次期当主!



「えー!私も蒼くんのお家行きたい!そうだ!今度の歓迎会の時の着物は蒼くんのところのにしよう!いい?」

「…もちろん。構いませんよ」

「やったー!」



思いがけず蒼の家に行けることになった姫巫女は本当に嬉しいそうに笑っていた。
蒼は…もしかして不満げ?