「…変ではありませんよ。俺は葉月家のトップになる人間だから」
「ふーん。複雑なんだね。でもきっといろいろ思うことはあるよね?」
「…」
アナタにそんなことを言われるまで思うことなんてなかったよ。
アナタさえ居なければ私は男でいることに違和感も疑問も持たずにずっと自分を誇りに思えていたのに。
「大丈夫。私は紅ちゃんの味方だよ。私の前では本来の紅ちゃんでいていいんだよ」
「…はい」
真っ直ぐ私を見つめる姫巫女の瞳には深い慈愛を感じる。
愛に満たされている優しく、正しい、女神のような人。
…あぁ、それでも嫌いだな。
「…私のこと、嫌い?」
「え」
少しの沈黙を破るように姫巫女がまた声を出す。
姫巫女の言葉に驚いて姫巫女を見つめると、姫巫女は優しい笑顔でこちらを見つめていた。
「そのリアクションは肯定でいいのかな?」
「…違います。そんな訳ないでしょう」
どこか悲しげな姫巫女に私は深呼吸を小さくしてあくまで冷静に答える。
落ち着け。
姫巫女のことは嫌いだが、姫巫女との関係を拗らせるわけにはいかない。



