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桜の花が一斉に散ってから数週間。
姫巫女が私たちの学校に現れてうちの学校は随分変わった。
姫巫女が現れたことにより、より一層警備体制が強化され、そして能力者と呼ばれる全ての男たちは皆、浮き足立っていた。
職員も含めて男しかいないこの場所に可憐で愛らしい女の子が現れれば特に年頃の男の子は喜ぶだろう。
私がバレンタインの時に調理室で料理をしているだけでも騒がれたからね。
まぁ、あの時は女の幽霊がいるって言われていたんだけど。
姫巫女の側で姫巫女の護衛を任されるのは私たち守護者のみ。
姫巫女を護衛する守護者についてはいつも姫巫女が指名していた。
そして指名された1人は姫巫女に半日付き添うようになっていた。
姫巫女のお気に入りは蒼だ。
毎日必ず蒼を護衛に指名し、残りの半日は私か武か琥珀で担当する。
さすがに連日護衛だと蒼が疲れるので、蒼が指名されても、他の者が担当する日もあったが、それに対して姫巫女はどこか切なげな表情をしていた。
いや、悲劇のヒロインみたいな顔するなよ。
蒼も休みたいでしょ。
て、思っていたことは内緒だ。
今日の姫巫女の午後からの護衛の担当は私だ。
なので、私はこれからお風呂に向かう姫巫女の一歩後ろを護衛として歩いていた。
「ねぇ、紅ちゃんも私と一緒にお風呂に入ろうよ」
「入りません」
「えぇ。何でー」
姫巫女は私の前を歩いているので、どんな表情をしているかわからないが、声だけで不満だということは十分伝わってくる。
ついでに可愛らしさも。



