「それで?岸本先生も佐藤先生もアナタたちなんだよね?どうしてリスクを冒してまでわざわざうちの職員になんてなったの?」
「本当にそれですよねぇ。私もここの職員になるなんて大反対だったんですけどね?」
私の質問にすぐに答えたのは暁人だ。
暁人はそれはもう迷惑そうに龍をチラチラと見つめていた。
…やっぱり原因は龍なんだ。
「実体を持てるようになったらまずは1番に少しでも紅の側で紅のことを守りたいと思っていたんだ」
「え」
私を守りたい?
たったそれだけの為にこんなにも大きなリスクを冒して職員になったっていうの?
「俺はお前を殺してしまうこの世界が嫌いだし、人間も嫌いだ。だからこの世界から人間を排除するし、世界も今度こそ手に入れる。そしてお前を絶対に殺させない」
「…っ」
実体である龍を見たのは1年ぶりだ。
今の龍からは声だけでは伝わらなかったもの伝わってしまう。
龍は本当に私が殺されてしまったことを悔いていたのだ。
「心強いね。今度は学校にも私の仲間がいるんだね」
「ああ。その為に職員になったんだからな。今度は俺がお前を守る」
「…うん」
強い思いを宿している龍の瞳を私はじっと見つめる。
龍なら私は信じられると思った。
前回から今まで私の味方でいてくれたのは龍だけだったから。
「あのー。また2人だけの世界に入るのやめてもらってもいいですか?何度も言いますけど私もいるんですよー」
見つめ合う私たちに対して、本日2回目の暁人の呆れた声が聞こえたのは、このほんの数十秒後の出来事だった。



