「わかった」
「何がわかったんだ?」
つい声に出して神様に答えるとたまたまそこにいた龍がそんな私を不思議そうに見つめた。
いつの間にか龍の祠の場所まで辿り着いていたみたいだ。
1人でいるはずなのに何かに返事をしていた私を龍がマジマジと見つめている。
「…」
…いや!それよりも!
やっぱりホールで見た〝岸本〟と名乗る男は龍だったんじゃん!
今目の前にいる姿そのままだし!
それに…
「実体を持てるようになったの?」
「ああ、まだこの通り力はそれほど強くないがな」
私に質問されて龍が右手から小さな火の柱をボウッと出現させる。
それから風、小さな稲妻、水の玉を瞬時に順番に出現させていた。
…さすが、大厄災と呼ばれるだけある。
自分の力はまだ弱いと表現したつもりなのだろうが、十分に強さが伝わってしまう力を感じるし、何より全ての能力を扱えるのはさすがだ。
チラリと龍が封印されている祠に視線を向ける。
龍自体はここに封印されている訳だが、封印の綻びから徐々に力が漏れているのだろう。
その漏れ出た力で龍はついに実体を持てるようになったのだ。
「久しぶりだね」
「…そうだな」
2度目の人生を始めてからすぐに龍とは再会できた。
しかし1年前の龍はまだ封印されていた為、姿を見ることはできなかった。
龍の灰色の長い髪が風に靡く。
月明かりにほんの少し照らされている龍はどこか怪しく、そして何よりも美しかった。



