誰かから女の子として扱われる機会はそうそうない。
今でこそそんなことは思っていないが、1度目の私は男であり続けることに一種の誇りを持っていた。

女である私が守護者になれたのも、次期当主でいられたのも、全て私が努力して〝男〟に徹してきたからだ。

姫巫女はそれを知りもせず、簡単に私を女の子に変えてしまおうとする。
それが私はすごく嫌だった。


まあ、それは1度目の話であり、今では何とも思わないけどね。
今の地位に誇りも何もないし。
朱に譲れるものなら譲りたいくらいだし。



*****



「兄さん!」



麟太朗様の話も終わり、四神屋敷から出るといきなり朱が私の前に現れた。

そしてそのまま勢いよく抱きつかれた。



「っ!え!朱!?」



何とか朱を受け止めて私は思わず驚きの声を上げる。


何でいるの!?
今ホームルーム中じゃない!?


「ちょっ、ちょっと!まだここにいていい時間じゃないでしょ!?ホームルームは!?」

「…あるけど兄さんのことが気になって」

「…」



私を抱きしめている朱の顔は見えないが気持ちが落ち込んでいるのはよくわかる。

朱もきっと見ていたのだろう。
側から見れば無茶な戦い方をした私を。


朱は私のことになると過保護だし、心配性だからな。



「心配かけてごめんね。俺は大丈夫だよ。無傷だから」

「…うん」

「俺が誰よりも強いことは知っているでしょ?」

「…うん」



朱に優しく声をかけながら朱の背中を宥めるようにポンポンと叩くと朱は私の頭に自分の頭を当ててスリスリとし始めた。

朱なりに甘えているのだろう。
まるで大きな犬のようで可愛らしく感じてしまう。