姫巫女は未だに怯えていたが、私に身を任せてくれた。
そこから私は姫巫女の顔から腕、足を見ていき、最後に首元を見てから少しだけシャツのボタンを外して左胸の上を見えるようにした。



「…」

「…あ、あの、恥ずかしいです」



私に左胸上を見られ、恥ずかしがっている姫巫女の左胸上には確かに姫巫女の紋章があった。

椿の花を思わせる花の周りに複雑な模様が描かれた痣、これが姫巫女の紋章だ。



「無理をさせてごめんね。怪我がないようで安心した」



私は頬を赤らめている姫巫女に謝ってすぐに服を整えた。



「お待ちしておりました。我らの姫巫女」



そして改めて姫巫女に膝をついて頭を下げた。

まさか私が姫巫女を受け入れる役をしなければならないとは思わなかった。
だが、私が1番に確認したのだから仕方がない。

…確認しなくてもわかっていたけどね。


私が頭を下げたことによって私の後ろにいた蒼、武、琥珀も同じようにその場に膝をついて頭を下げた。



「え、ええ?姫巫女って何?」



私たちに急に仰々しく頭を下げられて姫巫女は困惑しているようだ。

しかし困惑しているのは姫巫女だけではないようで
、私たちから少しだけ離れた校舎から私たちを見ていた生徒、職員たちもざわざわとし始めた。

ここからでは何を言っているのかわからないが、おそらく全てを察して騒ぎ始めているのだろう。

姫巫女がついに現れた、と。



本当は現れて欲しくなんてなかった。
できればずっと出会いたくなかった。

だが、シナリオには逆らえない。
姫巫女はついに現れてしまったのだ。


徐々に広がっていく歓声の中、私は1人不安を抱えていた。


どうか今回は独りになりませんように。