火の性質上、妖の大きな首を一瞬で切り落としてあげることはできない。
何とか苦しい時間が短いように急いで燃やしたので、苦しい時間はほんの僅かだっただろうが、それでもきっと穏やかな終わりではなかっただろう。
例えば刀とか上手に使えたら一瞬で首を落とすことができるのにな。
私にとって人間も妖も同じだ。
だから妖を殺す行為も辛いものがある。
「…」
首が灰になった後も燃え続ける妖の体を見て私はやるせない気持ちになった。
やるべきことは終わった。
今でも炎の向こうから絶え間なく、蒼たちの必死な声が聞こえる。
これ以上心配をかけさせるわけにはいかない。
私は私の周りを囲む炎を消して、炎の周りで私の名前を何度も呼んでいた蒼たちの前に姿を現した。
「「「紅!」」」
私の姿を見た瞬間、蒼、武、琥珀がこちらに急いで駆け寄ってきた。
「怪我は!?」
まず最初に珍しく笑顔ではなく、慌てている様子の蒼が私の肩を掴んで私の体全体をくまなく見始める。
特に怪我をしていないことを確認すると蒼は安堵した表情を浮かべ「よかった」と呟いた。
それからスッと表情が消える。
あ、かなり怒っているぞ。
「バカ!お前は!何考えてこんなことした!?」
蒼の静かな怒りに冷や汗を流していると、蒼が怒り出すより先に武が大きな声で私に怒鳴ってきた。
「…」
武の横で琥珀も無言の圧を私にかけている。
はい、やっぱり全員怒っているよね。
側から見たら自殺行為だもんね。



