*****
今度こそ俺は妖が全てを支配する世界を手に入れる。
今回は人類最強の紅もいる。
妖側は今、歴代最高の戦力を誇っている。
世界を支配するなら今なのだ。
そう思っていた矢先、何故か姫巫女とその守護者たちが聖家に襲撃してきた。
人間は誰も知り得ない場所だというのに。
それでもあの程度の力では俺たちを下し、俺を再封印にまで漕ぎ着けることは不可能だろう。
守護者たちを全滅させ、全ての元凶である忌々しいあの女、姫巫女をこの手で殺す。
そうしてやっと俺たちの世界を手に入れるのだ。
「龍」
「ああ」
短い言葉を紅と交わし、互いに背中を預け、守護者たちの相手をする。
守護者たちもなかなか手強い相手だが、俺たちには及ばない。
2人で相手をすれば問題ない。
だが、数の利を活かし、アイツらは戦い方を変えてきた。
少しずつ、少しずつ紅との距離が離れていく。
互いに背中を預けていた存在が遠く離れていく。
そうなればさすがの俺も先ほどとは違い、負担が増え始めた。
それでもこんな奴らに負ける俺ではない。
きっと紅も…。
目の前にいる炎と雷の守護者の攻撃を軽くいなしながらも、たまに紅の様子を見て、それから攻撃をする。
隙を見てまた紅の元へ戻ろうとした時、俺はあの光景を目の当たりにした。
紅が守護者なんぞに馬乗りされ仰向けに倒れている。
血が…血が紅を中心に溢れている。
そこまで理解して俺の頭の中は真っ白になった。
あの血は紅のものなのか。
まるで死んでいるように空を見上げるあの瞳には光はあるのか。
紅の心臓に突き刺さっているあれはなんだ。
死んだのか、あの紅が。
「いけぇ!」
雷の守護者の叫び声が聞こえる。
それと同時にドーンッと派手な音が聞こえ、俺の体中を激しい痛みが襲った。
雷の守護者の雷が俺の体に直撃したのだ。
紅に気を取られた一瞬の隙をあの男は見逃さなかった。
「これで終わりだよ」
その場で膝をつく俺の周りを強い炎が取り囲む。
冷淡に俺を見下す炎の能力者。こいつは葉月の者なので、紅の血縁者なのだろう。
ああ、俺はお前の血縁者によって終わるのか。
ふと俺は今そこで息を引き取った紅のことを思った。



