紅の強さに改めて密かに感心していると紅は「まあ、もちろん返り討ちにしたよ。暁人は妖だからもう回復していると思うけど昨日の暁人は私よりボロボロだったんだから」と言って笑っていた。
紅は本当によく笑うようになった。
最初の頃はただ今笑ったな、くらいにしか思えなかった紅の変化もいつの間にかどこか心地よく、嬉しくなるものへと変わっていた。
元々気づかなかっただけで、俺は努力家なこの人間のことを気に入っていた。
それがここでの生活を経ていろいろな彼女を知り、俺はそれを自覚し、大切だと思えるようになっていた。
「ん?何?龍?」
不思議そうにこちらを見て首を傾げる紅の髪は仲間に引き入れた時よりもずっと長い。
ふわふわの肩よりも長い髪が風に吹かれ、ゆらゆらと揺れている。
まるで少年のようだった紅はここへ来ていつの間にか少女のようになっていた。
きっと今の姿こそが紅の本来の姿なのだろう。
「…別に。あまり無理はするなよ」
「え?何それ?どういうこと?」
「そのままの意味だ」
こちらを未だに不思議そうに見る紅の視線に何故かむず痒くなり、俺はその視線が俺に向けられないようにグッと紅の頭を抑え、下を向かせる。
そしてそのまま乱暴に頭を撫でた。
そんな俺に紅は「撫でるならせめてもっと優しく!」と抗議していたが、それを俺は無視してしばらく紅の小さな頭を堪能したのであった。



