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人類最強の能力者。
何故、こんなにも魅力的な存在を人間は捨てたのか。
理解に苦しむが、人間が捨ててくれたおかげで俺は最高の道具を手に入れた。
最高の道具である紅は期待以上に俺たち妖の力となった。
人間を殺せはしなかったが、殺せないだけで敵対する人間に対して紅はいつも容赦なかった。
死なない程度にだが、死にたくなるような痛みを与え、動けないようにする。
殺さないだけである意味酷い戦い方を紅はしていた。
そんな戦い方ができるのも紅が圧倒的に相手より強いからできる選択だ。
やはり人間は馬鹿だ。あんなにも戦力になる人間を何故、捨ててしまったのか。
最初こそ、感情のないまるで人形のような紅だったが、聖家に預けたことによってそれも変わった。
以前よりも…いや、それよりももっと紅は明るい笑顔を俺や皆に向けるようになった。
明るい紅を見て、本来、この少女はこんなにも明るく、優しい存在だったのだと、俺は徐々に理解していった。
「…お前、その怪我はどうした」
「ん?あー、これ?」
紅が俺の元へ来て、半年。
聖家の縁側でたまたま出会した紅は全身傷だらけで俺は自身の目を疑った。
あの紅にここまでの傷を負わせられる者が人間にいたのなら、そいつはどんなやつなのか知らなくてはならない。
やがてこちらの脅威になる可能性があるからだ。
新たな脅威へと警戒を強める俺だったが、紅は俺の予想とは全く違う怪我の原因を口にした。
「これは暁人とやり合った時の傷だよ。昨日、急に暁人が寝込みを襲ってきてさ。さすがに対処が遅れてこのザマよ。本当、暁人って陰湿だし、卑怯だよね」
あはは、と何でもないように笑う紅に俺は呆れてしまう。
まさかの身内の犯行だったとは。とんだ勘違いをしてしまった。
寝込みをあの暁人に襲われて命があるとはやはり紅の強さは侮れない。



