「…私もあや婆とは初めて会った時から初めてな感じがしなかったよ。どこか懐かしくも思った。私、多分、前世であや婆に助けられているんじゃないかな」
「前世ですか…」
1度目とは言わずに、あえて前世という言葉を使った私にあや婆が興味深そうな視線を向ける。
「そうなのかもしれませんね。私はもう長い年月、たくさんの方の生死を見てきました。その中にアナタがいたのかもしれません」
そしてあや婆はどこか納得したように私に優しく笑った。
そうなんだよ、あや婆。
ちょっとだけ今は違うけど私は本当にアナタは助けられた1人なんだよ。
「…あや婆、ありがとう。私、あや婆のお陰で今、笑っていられるから…っ」
「あらあらあら」
何とかあや婆にお礼を伝えたいのだが、涙が溢れてそれを伝えられない。
急に泣き始めた私を見て、あや婆は洗い物をする手を止めると、にこにこ笑いながらこちらにやって来た。
それから自身の懐から白いシンプルなハンカチを出すと、私の涙を拭った。
「初めて会ったあの夜もアナタは泣いていましたね。ここまできっと苦労してきたのですね」
「…ぅゔ、ぐすっ」
今までずっと気を張っていた私にとってあや婆の隣は何よりも安らげる場所だった。
だからこそ、一度気が抜けると、もう一度気を引き締めるのは難しい。
涙が溢れて溢れて仕方のない私をあや婆は涙が止まるまでずっと優しく見守っていてくれた。
この優しさが今の私を作ってくれた。やはり人間も妖も同じだ。
悪い者もいれば、優しい者もいる。
だからこそ平等に手を取り合って生きていけるはずなのだ。
これは人間と妖、両方と生きてきた私だからこそ知っている事実だ。
いつか世界の歪みが解決し、正しいシナリオが始まるのなら、今度こそ私は人間と妖が共に生きられる本当の平和な世界を手入れたい。



