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楽しい時間はあっという間に過ぎて夜になった。
聖家の妖たちと一緒に夕食を食べ終えた後、私はあや婆と2人で後片付けをしていた。
「いいんですよ、紅。あとは私がやりますから」
「いいのいいの。遠慮しないで。2人でやった方が早いじゃん」
あや婆が洗った食器を拭いて棚に片付ける私にあや婆が少しだけ申し訳なさそうにしている。
私はそんなあや婆ににっこりと笑い、また食器を棚に入れた。
「…何だか紅は不思議ですね」
「え?」
突然しみじみとそう言ったあや婆に私は首を傾げる。
急にどうたのだろうか。
「ごめんなさいね。歳だからなのかしら。アナタとは初めて会った時から初めてではないような気がしてましてね。おかしいですよね。初めてなはずなのに」
ふふ、と優しく笑うあや婆を見て心の奥底からじんわりと暖かさが広がる。
あや婆には1度目の記憶がない。
それでもどこかで私と過ごした日々をあや婆は覚えてくれているのかもしれない。
1度目のボロボロだった私をここまで回復させてくれたのは全てあや婆の分け隔てない優しさのお陰だ。
敵であるはずの私にも心砕き、優しくしてくれたあや婆がいてくれたからこそ今の私がある。
そんなあや婆の姿を見てきたからこそ私は妖と人間の共存を望めたのだ。



