「ここには敵もいないし、呑気にもなるよ」
「そうですか」
暁人に答えながらも私は周りの妖たちを起こさないようにゆっくりと体を起こす。
そんな私を暁人はただ何を考えているのかわからない物腰の柔らかい笑みで見つめていた。
「アナタの敵とは誰なんですか?人間?それとも私たち妖?」
暁人が興味深そうにそう聞く。
少しでも間違った答えを言えば、こちらに害を加える気満々の圧まで感じる雰囲気だ。
2度目でも変わらず、人間である私に好戦的な暁人に私は心の中で思わず苦笑してしまった。
そして1度目の暁人とのことをふと思い出した。
1度目の暁人は人間嫌いからか、いつも私に嫌な意味でよく絡み、その結果よく殺し合いにまで発展していた。
だが2度目の暁人は一応龍の庇護下にある私に簡単には手を出せないようで、まだ殺し合いを仕掛けられたことはない。
それでも暁人の言葉や行動には未だにちゃんと私を始め、人間を心底嫌っている感情があり、毎回暁人と関わる度にそれをひしひしと感じていた。
「…人間も妖もどちらも同じだよ。私を殺そうとする存在はどちらでも私の敵だから。みんなそうでしょ?」
私の答えを待つ暁人に私はおかしそうに笑う。
結局人間だからとか妖だからとかではないのだ。
自分に敵意を向けてきた、それこそが根本であり、重要なことなのだ。
「…まぁ、そうですね」
私の答えを聞くと暁人はどこか納得したように頷く。
てっきり何か理由をつけて文句の一つでも言ってくると思っていたので拍子抜けだ。
「私もここ一年ほど不本意ではありますがアナタを見てきましたからね。アナタが私たちの敵ではないということはわかりましたよ。そして優しいということも。もちろん今でも人間のアナタのことなんて認めたくありませんがね」
嫌そうにだが、仕方なさそうにあの暁人が私を認める言葉を吐く。
今日の暁人は何かに毒されているのか様子がおかしい。
1度目も含め、こんなをはっきりと言われた記憶はない。
変なものを見る目で暁人を見ていると「何です。その失礼な目は」と暁人がこちらをギロリと睨んできた。
…うん。そっちの方が暁人らしくていいよ。



