「まあ、そりゃあ普通に痛いよね…」
「…っ!大変だ!」
私の答えを聞いて雷が血相を変える。
心配で心配で仕方のないといった表情を浮かべている雷はそのまま私をヒョイっと抱き抱えた。
まさかのお姫様抱っこである。
「今すぐ休もう!いい木陰を知っているよ!」
「え、あ、いや。休むけどさ…」
私は普通に1人でも歩けます。
と、雷に言おうとしたのだが、そんな私の次の言葉など聞こうともせず、雷はとんでもない速さで急に走り出す。
「…っ!!!」
弱いとはいえ、妖の本気の足、速すぎる!
「僕たちも行くー!」
「あたしもー!」
そんな雷の本気の走りに全く着いて行けれていない子どもたちだったが、それでも子どもたちは追いかけることを諦めることなく、一生懸命雷の後を追っていた。
また風の能力を使える子はその能力を使い、他の子たちよりも少しだけだが速く移動していた。
…まぁそれでもほんの僅かな差だったけど。
*****
雷に連れて来られたのは聖家敷地内にある大きなイチョウの木の下だった。
雷は一度私を木陰に下ろすと、「ちょっと待っててね」と言ってイチョウの葉っぱを集めだした。
後から追いついてきた子どもたちも同じようにイチョウの葉っぱを集める。
そして数分後、イチョウの木の下には大量のイチョウの葉っぱが集められていた。
実はこの時、私も全然動けるのでそのイチョウの葉っぱ集めを手伝おうとした。
だが、何故か重傷の怪我人扱いをされ、それを誰も許さなかった。
「さあ、どうぞ、お姉ちゃん」
雷に再び抱き抱えられて私は丁寧にイチョウの葉っぱの上に置かれる。
私はそこまでされて彼らが一体何を一生懸命作っていたのかわかった。
彼らが一生懸命作っていたのはイチョウの葉っぱのベッドだったのだ。
「紅、寝心地はどう?」
「気持ちいい?」
子どもたちが一番最初にベッドを使った私を期待に満ちた目で見つめる。
…可愛い。
「うん。最高。これならすぐに怪我が治りそう」
「本当!?やったー!」
可愛い子どもたちに癒されながらも笑顔で答えると子どもたちは一斉に喜んでその場でぴょんぴょん跳ね始めた。



