「ネックレス、大事にしてくれているんだね」
にこにこと私のことを見ている男の人のネックレスに私は思わず触れる。
「そうだよ。だってお姉ちゃんの大切なもの何でしょう?だったら大切に持っていないと。あの時は本当にありがとう」
そんな私に男の人はふわりと色気のある笑顔を向けた。
…あの男の子がこんなにも色男になるとは成長とは恐ろしいものだ。
「…雷、嬉しいのはわかるが近いぞ」
まじまじと男の子を見ていると、何故か私たちの間に無表情のまま龍が無理やり入ってきた。
「あ!龍様!おかえりなさーい!」
今度はそんな龍に男の人は嬉しそうに抱きつく。
大人の男と大人の男の抱擁はあまり見ない光景なので、何だか変な感じだ。
「雷はね。見た目はあんな色男だけど中身はまだまだ子どもなんですよ」
大の大人の男たちの奇妙な抱擁を珍しいものでも見る目で見ていると、いつの間にか私の隣に移動していたあや婆がそう言って、微笑ましそうに2人を見ていた。
「ところで紅さん」
「はい」
「アナタは龍様の番ですよね?」
「はい?番?」
あや婆のにこやかな質問の意味がよくわからず、私は首を傾げる。
「あら?番をご存知ではない?なるほどそうですか…。ではアナタは龍様の大事な番候補ということですねぇ」
ふふ、と愉快そうに目を細めるあや婆だが、首を傾げる私に〝番〟について説明する気はないそうだ。
1度目の時もここに来て随分慣れた頃に確かそんなことを言われたような気がするが、その時も特に何も説明はされなかった。
私も疑問に思っただけで特に〝番〟について調べていないので今も全く意味がわからない。
また今度龍か暁人に聞いてみるか。
後日、暁人に〝番〟について聞いてみたが、「アナタに教える義理はありません」とだけ爽やかな笑顔で言われ、教えてもらえなかった。
…仕方ないので今度は龍に聞いてみよう。



