「お姉ちゃーん!」
「へ?」
ドーンっ!と突然強い衝撃と共にとても大きな人にギュウっと抱きしめられる。
お、お姉ちゃん?
全く身に覚えのない〝お姉ちゃん〟に私は首を傾げる。
「会いたかったよ!お姉ちゃん!」
私を抱きしめていた人…いや、男の人は私から一旦離れると本当に嬉しそうに私を見つめて笑った。
…えっとどちら様?
1度目の聖家にはこんな男の人はいなかった。
涼しげな大人の色気を感じる切れ長の目に整った顔立ち。サラサラの黒髪の頭にはふわふわの狐のような耳もあり、後ろには大きなこれまたふわふわの尻尾が何本も見える。
人間に擬態しきれていない弱い妖の典型的な姿だ。
「お姉ちゃん、僕のこと覚えていないの?」
大人な見た目とは全く合わない可愛らしい子どものような言動で男の人が私を寂しそうに見る。
「…え、えっと、ちょっと待ってね…」
あまりにも寂しそうに私を見るので、私は罪悪感に負けて出もしない彼の記憶を探そうとした。
あ。
ふと何となく見つめた男の人の首元に見覚えのあるネックレスがあることに私は気がつく。
シンプルな銀のチェーンにまるで私の名前のように赤く光る石の付いたネックレス。
あれは私が父から初等部の入学祝いの時にもらったネックレスだ。
あれを付けているということは…。
「去年の夏の子?」
「そう!そうだよ!覚えてくれていたんだね!」
恐る恐る男の人に確認をしてみると男の人は無邪気な子どものように嬉しそうに笑った。
いや、一年で成長しすぎ!
妖って本当に人間じゃ理解できない部分がたくさんあるよね!
彼は去年の夏祭り中に出会い、私のネックレスをあげて聖家の場所を教えた子どもだ。
無事に辿り着けるか心配していたが、ちゃんと辿り着いてこんなにも立派に成長していたなんて。



