「あ」
一瞬、何故、龍が困惑しているのかわからなかったが、すぐにその原因がわかり、私から間の抜けた声が漏れる。
そうか。
今までは神様が心の中を読んでくること前提で、神様と話をしていたが、今ここには心の中を読むことができない龍もいるのだ。
そんな龍が今の私と神様の会話を聞いても、全く内容が噛み合っていないので、困惑もするだろう。
「えっと神様は心の中が読めるから心の中の私の言葉に反応していたんだよ。龍も神様に心の中読まれなかった?」
「ああ。あれは奇妙な体験だったな」
「わかる。慣れてないとびっくりするよねぇ。でももう神様のこと認識しちゃったし、これからは龍も神様に心の中読まれて、話しかけられる機会があると思うから残念だけど慣れてね」
「…善処する」
『何です。どうして私が悪い流れになっているのですか』
苦笑いを浮かべる私とため息をつく龍に神様が抗議をしている。
だが、その抗議を私は受けるつもりはなかった。
抗議されても仕方ないからだ。
普通の人なら心の中を読まれて、さらに急に自分の頭の中から知らない人の声が聞こえるとびっくりするって。
『…2人ともよろしいですか。もう一度言いますが、私の目的はこの世界を滅びさせないことです。シナリオが姫巫女を中心に歪み始めている今、何が起こるかわかりません。とりあえずは私が今何が起こっているのか徹底的に姫巫女を中心に調べます。それまではどうか安全な場所で待機をお願いします』
「わかった」
「…ああ」
神様の真剣な声に私と龍が返事をする。
今までは1人だったが、そこに龍が加わってくれると思うと心強い。



