「〜っ」
羞恥心でどうにかなりそうになりながらも私は何とか扉のところまでやって来た。
ガチャリとドアノブを回して扉を開けてみる。
するとそこにはお風呂とトイレと洗面台があった。
次はその足で鉄格子の元へ行ってみた。
グッと鉄格子を掴んでまずは揺すってみる。
もちろんそれだけではびくともしない。
ならばこれでどうだと炎を出そうとしたが、私から炎が現れることはなかった。
「はぁ」
状況を少しずつ理解し始めた私からため息が漏れる。
この力が出ない感じはおそらく能力の制御装置を付けられているからだ。
そしてその制御装置とはおそらく右手首にある〝これ〟だろう。
私はいつもならそこにはない右手首にあるシンプルな銀の腕輪をチラリと見た。
何と用意周到なことだ。
この部屋には当然だが、私のスマホもない。
連絡手段を断たれ、能力も使えず、鉄格子で物理的に閉じ込められているこの状況からどうやって自力で脱出することができるのだろうか。
この状況にどうしたものかと考えていると、ガチャリと誰かの手によって鉄格子の向こう側の扉が開かれた。
「姉さん。目覚めたんだね」
鉄格子の向こうでふわりと朱が笑う。
この部屋にやって来たのは朱だった。
「丁度よかった。姉さんがそろそろ目覚めるかもって食事を用意させていたんだよ」
私にいつもの愛らしい笑顔を向けた後、少しだけ朱がこの部屋から離れる。
そして数分もしないうちに朱はこの部屋に戻ってきた。



