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「…審判は私が務めよう」
私と朱の間で父が神妙な顔をしてそう言う。
朱は葉月家に着くなり、父の元へ向かい、これから私と実戦をすることを父に伝えた。
そして私たちは今、葉月家の敷地内にある武道場でお互いに見つめ合っている。
「ルールは学校で行うものと同じだ。首に付けているチョーカーを先に壊した者の勝利とする。勝者こそが我が葉月の次期当主に相応しいと認め、次期当主に任命しよう」
相変わらず冷たく、淡々としている父だが、何故かずっと私に無言の圧をかけてくる。
圧の内容はおそらく〝絶対に負けるな〟だ。
言われなくても父の考えくらいわかる。
あんなにも私を次期当主にしたい人だ。
ここで私に負けられては困るのだろう。
まぁ、いくら朱が2度目とはいえ、負ける気はしない。
私の方が強いのだから。
最初こそわざと負けて朱に次期当主を譲るつもりだったが、それはやめることにした。
監禁されたらたまらないからだ。
この実戦には普通に勝って、その後姿をくらまそう。
「それでは始めよう」
父の合図によって実戦が始まる。
いつもの私なら様子を見て戦況を作るが、今日はそういう気にはならなかった。
さっさと終わらせる。
「…」
黙ったまま私は朱に向かって鋭い火を放つ。
チョーカーに当たればすぐ壊れるし、当たらなくても次の一手だ。
朱がそれを涼しい顔で避けたのでその先に同じ火を私は放った。
それを朱はまた避ける。
やはり簡単にはいかないか。
私より弱いだけでちゃんと葉月の男だもんね。
ならばもっと朱を追い込もうと今度は避けきれないほどの数の火を朱に放つ。
逃げ場などない。どこへ逃げても無駄だ。
唯一これを防ぐには己の火で相殺するしかないが、朱の力では無理だ。
私の方が圧倒的に強いから。



