「姉さん?」
私の腕の中で戸惑う朱の声が聞こえる。
もしかしたらまた死ぬかもしれない私をずっと思いながら朱は朱なりに戦ってきたのかな。
ずっと1人で。
そう思うと愛おしさと辛さで胸がぎゅーっと締め付けられた。
この愛おしさは弟に対するものなのか。
異性に対するものなのかわからない。
だが、〝大切な存在〟に対するものだということはきちんとわかっていた。
「…姉さん」
最初こそ戸惑っていた朱の声もいつの間にか安堵したものへと変わる。
そして朱も私を優しく抱きしめた。
どのくらいお互いをただ抱きしめていたのだろうか。
心地の良い沈黙が続く中、それは朱によって破られた。
「…姉さん、僕と勝負して欲しい」
「え」
突然、何の脈略もなく〝勝負をして欲しい〟と朱に言われて私は疑問の声を出す。
一体なんの話が始まったのか。
「実戦を今から葉月家でやって欲しいんだ。相手は僕。僕が勝ったら次期当主は僕がやるから。そう父上とも話をつけてある」
「…な、なるほどね」
私から離れてにっこりと笑う朱に私はとりあえず頷く。
いつの間にそんな話をしていたのだろうか。
まさかあの父をそんな方法で説得していたとは。
これは好都合だ。
私が朱に負ければいい。
そうすれば自動的に目的を叶えられる。
次期当主ではなくなり、守護者でもなくなる。
姫巫女から離れられる。



