麟太郎様は気が狂われたのか。
そう言われてもおかしくないほどの豹変ぶりだ。
こんな麟太郎様、誰も見たことがないはずだ。
いくら姫巫女が大事だからといって全能力者の上立つ者がこうも取り乱してしまうものだろうか。
「紅!お前は由衣の言う通り由衣を傷つけた!その罪により、能力者界を追放…」
「待ってください」
この場にいた誰もが何も言えなくなっているところにまさかの人物が現れる。
「僕の話も聞いてください」
そこに現れたのは真剣な表情をした朱だった。
な、何で、ここに朱が?
朱の突然の登場に私だけではなく、この場にいる全員が朱に驚きの視線を向けている。
朱は全員の視線を一身に受けて静かに口を開いた。
「姫巫女様の言っていることは全て正しい…麟太郎様はそうお考えなのですよね」
「ああ、そうだよ」
「ではその証拠はありますか」
「…証拠?」
朱に証拠のことを言われて麟太郎様が一瞬だけ固まる。
だが、それはほんの一瞬で麟太郎様はすぐに次の言葉を口にした。
「証拠なんて由衣の言葉で十分じゃないか」
「そうですか」
皮肉げに笑う麟太郎様に朱が淡々と応える。
そして朱は自身が持っていたタブレットを麟太郎様に見せた。
「これには学校中の監視カメラの映像が集められています。兄さんの悪い噂が流れ始めたのは夏休み前くらいでしたのでその辺りから今のまでの兄さんと姫巫女様の様子を全て見させてもらいました。そこには姫巫女様に嫌味を言う兄さんも姫巫女様を睨む兄さんもいませんでした」
「…何だって?」
朱の言葉に麟太郎様が驚く。
おそらく私の無実を主張する朱の証言に驚いているのだろうが、私は別のことが気になって仕方なかった。
夏休み前からの映像を、しかも全て見たということはそれだけ膨大な時間を費やしたということになる。ましてや防犯上の都合この学校には監視カメラがない場所などないほどのカメラが設置されているのだ。それを全て1人で見たというのならそっちの方が「何だって?」案件だ。
まぁ、全部見たのならの話だが。
麟太郎様相手にハッタリを言っているのだろう。
すごい度胸だ。



