麟太郎様はきっと1度目と同じように私を能力者界から追放するつもりなのだろう。
1度目の私は身に覚えのない罪に抗った。
抗って抗って抗ったが、私の味方は誰もおらず、その抗いは無意味なものとなった。
さて2度目の私はどうするか。
正直今回も無罪なのだが、私は敢えてこの罪を被ろうと考えていた。
もし能力者界から追放されれば、次期当主からも守護者からも外れることができるからだ。
ここ最近の目標であった姫巫女から離れる、を達成することができる。
「…俺、いや、私は…」
ここでもう全て濡れ衣だが認めてしまおう。
そう思って言葉を発そうとした時だった。
「待ってください」
武が私の隣で静かに口を開いたのは。
「俺は紅とも姫巫女様とも同じクラスです。誰よりも2人と一緒にいました。ですが、紅は姫巫女様のことを睨むことも姫巫女様の教科書に手を出すこともしていません。それにもし本当に紅が教科書に手を出すなら火で燃やしていたはずです。ボロボロなんて生ぬるいことしません」
武!私の本当の犯行手口まで当ててみせるとかもう流石でしかないよ!
真剣な表情で私を庇い始めた武のセリフに私はちょっと感動してしまった。
私の狙い的には余計な助けだが、1度目とは違う武に思わず嬉しくなる。
逃げる為には犯人のままの方がいいが、気持ち的には私が犯人ではないと信じて欲しいとも思う。
複雑な気持ちだ。



