姫巫女が私を一方的に責めていた先ほどの場面も周りの生徒たちから見れば私と姫巫女がまるで口論をしているようにしか見えていなかった。
そして口論後、姫巫女を助けようと伸ばした私の手は周りから見れば突き落としているようにしか見えなかった。
このまま姫巫女の腕を掴もうとすると同じことが繰り返させるかもしれない。
「…っ!!!!」
私は何とか間に合うように階段から思いっきり飛んだ。
そんな私を信じられないものでも見るような目で見る姫巫女を強引に私の胸に引き込む。
私は自身の胸の中に姫巫女がいることを確認すると離さないように強く抱きしめ、自分の体が下になるように体を回した。
これで誰にも私が姫巫女を突き落としたとは言わせない。むしろ身を挺して守ったのだから。
…あぁ、私の能力が風だったらな。
そんなことを思いながらも私は衝撃に備えてぐっと体全体に力を入れた。
「…紅っ!」
階段の上から聞き慣れた誰かの焦った声がする。
声のする方へ視線を向ければ焦った様子でこちらに手を伸ばしている蒼の姿が目に入った。
…蒼だ。
声の主を知った瞬間、ふわりと私の体が宙に浮いた。
地面はもうすぐそこでスレスレの場所だ。
ギリギリセーフというやつだろう。
よ、よかったぁ。
「紅!怪我はない!?」
安堵したまま、姫巫女を抱きしめていると蒼が階段からこちらに急いで降りて来た。
「ご覧の通り無傷だよ。ありがとう、蒼」
姫巫女に回していた腕を解いて蒼に両手を上げて見せる。そして私はにっこりと蒼に笑った。
「ま、間に合ってよかった…」
いつも余裕のある蒼らしくない表情だ。
額にはうっすらと汗があり、笑っているがうまく笑えていない。
嘘の笑顔なら誰よりも上手いはずなのに。



