2度目の人生で世界を救おうとする話。後編





「紅ちゃんの言葉が怖いの。紅ちゃんの視線が怖いの。紅ちゃんの全てが怖いの。だって私を攻撃してくるから」



いつ、私が姫巫女を攻撃したというのか。
どちらかといえば常に守っているの間違いだろうが。

そう1度目も思った。

だが、1度目の私も2度目の私も思い当たる節はあるのだ。
1度目の私は同じ女なのに私とは違い、周りに愛されてのびのびと女として大切にされていた姫巫女に嫉妬していた。そのことから気づかないうちに姫巫女に冷たくしていたし、時には正しいことを厳しく姫巫女に言ってしまう場面もあった。

2度目の私は1度目とは違い努めて冷静で姫巫女とも距離を置こうとしたが、日常生活では姫巫女を嫌っていることを何故か本人に勘づかれ、海の特別外出では思わず怒鳴ってしまった。

姫巫女の言っていることはあまり具体的ではないが、ふわふわしているからこそどうしても当てはまる一面があってしまう。



「何で何も言ってくれないの?」



黙ったまま姫巫女の話を聞いていると姫巫女は悲しそうな顔で私を見た。
そしてその場から逃げるように走り出した。



「…っ!お待ちください!」



私は今、姫巫女の不本意だが護衛だ。
姫巫女を例え学校内とはいえ、1人にする訳にはいかない。
龍や暁人のように、もしかしたら妖が潜んでいる可能性だってあるのだ。

私は走り出した姫巫女を生徒の波をかき分けながら追いかけた。

姫巫女のような女の子が私を撒けるはずがない。
少しだけ姫巫女と距離ができたが、すぐにその距離はなくなり、私は姫巫女に追いついていた。



「…紅ちゃん」



私に追いつかれたことに気がついたのか姫巫女が泣きながらこちらに振り向く。
姫巫女の後ろには階段があった。


あ。


ここで私は思い出した。
1度目の時もこの出来事が決定打だった。

私の方へ振り向いた姫巫女がそのまま足を滑らして階段の下へ落ちていく。

1度目もこうやって姫巫女が私から逃げた後、姫巫女の不注意で姫巫女が階段から落ちそうになった時があったのだ。
その時、私は姫巫女の手を掴んでそれを阻止しようとした。だが、姫巫女は何故かそれを避けて自ら階段の下へ落ちていった。

そして全員にこう言ったのだ。

「紅ちゃんに突き落とされた」と。