2度目の人生で世界を救おうとする話。後編




普通にしているだけなのにどうしてこうも〝悪い噂〟の対象にされてしまうのか。
これも姫巫女を中心に歪んでいるシナリオのせいなのか。
だったらより一層、姫巫女と関わる機会を減らさなければ。

私が歩くたびに私の悪い噂や悪い評価が囁かれる。
1度目はこの状況にどんどん辛くなってきていたが、一度経験しているので気分のいいものではないが、十分に耐えられた。



「紅様って守護者に相応しいのか?」

「由衣ちゃんを攻撃しているよな?守る対象なのに」

「強いのはわかるけどさぁ、それだけじゃねぇ?」

「いやもしかして葉月家のコネで守護者になっていたりして」



私が聞こえていないフリをしているからいいものの何て酷い内容なんだ。

生徒たちが口にする言葉に耐えられるとはいえ、嫌な気持ちになっているとその声は突然聞こえてきた。



「お前たち」



静かな、低い、相手を威圧するような声が聞こえる。
声の方に視線を向けると私にいろいろ言っていた生徒たちに琥珀が無表情でだが、怒りのオーラを放ちながら声をかけていた。

声と表情だけでわかる。
ものすごくご立腹だ。



「誰に向かって言っているかわかっているのか」



琥珀にそう声をかけられて生徒たちが固まる。
恐怖で動けなくなっていると遠目でだがすぐにわかった。



「…何も言わないのか。それならば然るべき処分を与えるべきだな。名を名乗れ。お前たちの家に処遇を伝える」

「あ、え」

「ひっ、あっ」



生徒たちを冷たく睨みつける琥珀に生徒たちはやはり恐怖で何も言えない様子。
これではまるで私が琥珀に助けられたように見えてしまう。実際そうだがそうでは葉月の威厳が失われてしまう。



「琥珀」



私はそう思って琥珀に静かに声をかけた。



「紅」



私に名前を呼ばれて琥珀の雰囲気が和らぐ。



「処遇なら俺に任せて。これは俺の問題だから」



私はそう言うと生徒たちの前に立った。
琥珀はどこか不満そうだったが、特に私に抗議することなく、私の行動をただ黙って見つめた。