父の書斎から出るとそこには朱がいた。
朱が心配そうにこちらを見ている。
「兄さん、大丈夫?」
私の顔色が悪いことに気がついたのだろう。
最初から私を心配そうに見ていた朱だったが、私の顔色に気がついた朱はますます心配そうに私を見つめた。
「大丈夫だよ、朱」
朱に要らぬ心配はさせまいと私は笑顔で本心を隠す。
朱に父とのごたごたを知られる訳にはいかない。
ただでさえ心配性なのにこんなことが知られてしまったらますます心配させてしまう。
「何を話していたの?」
「…葉月家の今後のことについてかな」
「ふーん。具体的には?」
「体制についてだよ。いろいろとあるでしょ。誰がどこを任されるか、とか」
何故かいつもの愛らしい表情は浮かべずに感情のない無表情で朱が私を質問攻めする。
なので私は淡々と笑顔で先ほどのことについて話した。
嘘などついていない。ただ曖昧に答えているだけだ。
「何も話してくれないんだね」
「え」
一瞬だけ、仄暗い瞳で私に朱が何かを呟いたが、私は朱が何を言ったのか聞き取ることができなかった。
ただ、一瞬だけ見せた朱の仄暗い瞳に私の心はざわついた。
朱の何かがおかしい気がする、と。



