そう龍と話していたのに。
数日後、私は意見を変えることになった。
「…帰省するしかないね」
部屋で1人真剣な顔で私はそう呟く。
正確には脳内で神様と会話しているので1人ではないが。
『そうですね。アナタがこのままこの環境に身を置くのは危険かと思われます』
『…うん』
神様の声はとても深刻そうで事態はあまりよくないことが声だけでわかる。
神様曰くシナリオの歪みの原因は姫巫女にあるらしい。
姫巫女に関するシナリオだけ歪んでしまったからだ。
そこにたまたま私が関わっていたので最初こそ私が歪みの原因だと思っていたが根本から違っていたようだ。
『2度目を始める時、私は言いましたよね?アナタが死んでしまったことに絶望した誰かが世界を滅ぼしてしまった、と』
『うん』
『姫巫女を中心に歪まされたシナリオの結末はおそらくアナタの死です。すると世界はどうなりますか?』
『…また私の死に絶望した誰かによって滅ぼされる?』
『そうです。やはり紅は話が早くて助かります。世界が1度目の時のように大きく歪んでしまう前に歪みの中心から紅は離れた方がいいでしょう』
『その為にはやっぱりまずは帰省だね』
葉月家の次期当主であり、姫巫女の守護者のままではどうしても姫巫女と関わらなければならない。
帰省して父に打診する必要があるだろう。
私を次期当主から外してくれ、と。守護者についてもそこで上手いこと話して全部朱に任せる話にすればいい。
私じゃなくても大丈夫だ。
1度目でも私が追い出された後、朱が次期当主になって守護者になっていた。
まあ、両親の私を朱の身代わりにしたい、という考えは潰れるだろうけど。
むしろ私を犠牲にして朱の幸せだけ願う両親の願いがぱあになるなんていいことではないか。
私なりの小さな復讐ということで。
こうして私は急遽実家に帰省することにした。



