「はい!できた!次!」
一つ目ができると私はまた一つ、器をかき氷機にセットした。
それからできたかき氷を私たちは好きなようにトッピングした。
私がいちご練乳で龍がレモンだ。
「ん!美味しい!」
「ああ、悪くないな」
ダイニングテーブルで龍と向かい合ってかき氷を食べる。
龍は無表情だが、どこか楽しげだ。
龍の悪くない=いいなのできっと気に入ってくれたのだろう。
「まだまだあるから!遠慮せずにおかわりしてね!」
「わかった」
龍も楽しいと私も楽しい。
久しぶりの龍とののんびりとした時間に私はとても嬉しくなった。
ずっと何も起こらずこんなふうに平和な時間が流れればいいのに。
「…紅、お前は今年も帰省しないのか?」
かき氷を食べながらふと龍が私に質問する。
帰省かぁ…。
去年の夏は帰省する必要性を感じなかったから帰省はしていない。
冬の帰省は必要があったからしたけど。
正直私の家のようで私の家ではないあそこにはあんまり帰りたくないんだよねぇ。
「しないと思う。必要に迫られてないし」
「そうか。よかった」
龍の質問に答えると龍はどこか安堵したように一瞬だけふわりと笑った。
龍の貴重な柔らかい笑顔だ。
「なるべく俺から離れて欲しくないからな。何があるかわからない」
「はは、まあ、そうだね」
大厄災である龍が私の身を案じてくれるなんて何と心強いのだろう。
きっと私はもうちょっとやそっとじゃ死なないはず。
…この前死にかけたけど。



