「紅、少しいいかな?」
現状確認も終え、各自が雑談をしていると麟太郎様が私を部屋の外へ呼んだ。
一体どうしたのだろうか。
あまりいい予感を感じられないまま、私は麟太郎様の元へ向かう。
「どうされましたか」
部屋の外で麟太郎様と2人きりになったところで私は麟太郎様に感情を悟られないように注意しながら質問をした。
「…海の特別外出のことだけど由衣に怒鳴ったらしいね」
麟太郎様の声音が突然変わる。
低く相手を威嚇するような声音だ。
言葉こそ柔らかいがその声から怒りをしっかりと感じた。
やはり1度目と同じように麟太郎様にとって姫巫女は絶対で一番の存在だ。
だから姫巫女に害を与えた私に対して怒っているのだろう。1度目でも状況は違えどそういう場面はよくあった。
「…申し訳ございません」
「私に謝ってほしい訳じゃないよ」
「はい」
「由衣への謝罪はまだだよね?」
「はい」
「本当に申し訳ないと思っているのなら今すぐ由衣に謝罪をしなさい。心の底から」
「わかりました」
責め立てるような麟太郎様の言葉にどうしても1度目の1人になってしまった私を思い出す。
とても嫌な時間だ。
「麟太郎様」
この場には似つかわしくない甘い声が聞こえる。
声の方へ視線を向けると扉を少しだけ開けて姫巫女が不安げにこちらを見ていた。
「由衣。丁度いいところに来たね」
私に向けるものとは違う優しい笑顔で麟太郎様が姫巫女を手招きする。
するとおどおどしながらも姫巫女はこちらにやって来た。
「さあ、紅、わかっているね」
「はい」
麟太郎様の冷たい声に私は事務的に返事をする。
そして姫巫女の方へ体を向けて深々と頭を下げた。
「先日は怒鳴ってしまい申し訳ありませんでした」
「こ、紅ちゃん!?」
私の謝罪に姫巫女が驚きの声をあげている。
どんな顔をしているのか頭を下げているのでわからないが、きっと困った顔で私を見ているのだろう。
1度目もたくさん姫巫女に謝罪をした。そしてその度に困った顔をしていた。



