2度目の人生で世界を救おうとする話。後編





ついに来たチャンスに僕は右手を紅にかざし、強い嵐を紅へぶつけた。



「…っ!」



隙のできた紅にはそれをかわすことができず、紅の細い体が宙に浮く。
それと同時に僕は風で加速し、紅との距離を詰めた。



「ゔっ」



ドンっ!と地面に紅の体が仰向きに叩きつけられるのと同時にその体に馬乗りになる。
俺の下いる紅は地面との衝撃に顔を歪めていた。

今がチャンスだ。

今の紅にはもう僕に反撃する力はない。
随分体力を消耗しているように見えていたが、それは相当だったらしい。

僕の知っている万全の紅なら自分の上に乗る僕なんてすぐに払いのけるだろうが、もう体に力が入らないようでただだた紅は恨めしそうに僕を睨みつけていた。



「…さい、あく」



紅が苦しそうに僕に悪態をつく。



「そう」



僕はそんな紅をただただ見下ろした。

かつて大切だった僕たちの仲間。
いつの間にかこんなにも堕ちてしまいなんて情けないのだろう。
あんなにも頼れる存在だったのに。

逃げようとも、抵抗しようともしない紅を見つめたまま、胸ポケットに隠していた短剣を取り出す。

風の能力には雷や火、水のような直接的な攻撃力はあまりない。
上手く使えば妖の首を落とせるが、火力が弱い。
なので、こうして直接手を下せるように武器を隠し持つ風の能力者は多い。