転生したら、シンデレラの姉だった件


 
 ー間章ー
 ー突然の 来訪者ー
 ーエメチャル大帝国
 子爵 子息
 アレン 目線ー




 「…そう、ですか…
 あの家にもー伯爵家にも、居ませんでしたか…。」

 …美氷 こと ルリアが、エラー
 「シンデレラ」
 のヒロイン エラに激怒し、怒りに任せて、屋敷の 納屋へと向かっている日…
 それの、約 4日前のこと。

 ーエメチャル大帝国で、5本の指に入る程の、大富豪。
 ローランド 子爵家。
 その時期 子爵。
 私(わたくし)、アレン・ローランド、17歳
…は、自分の侍従の報告に、長い睫を伏せ、思わず、顔に憂いの表情を浮かべてしまいました。
 私の侍従で、同じく整った顔立ちをしている、トーリ(19歳)。
 ー彼は、私の良き友であり…家族とも呼べるべき存在…。
 そして今、私の側に控えるトーリが、思案の末に、私にこう言ったのです。
 「…アレン様…。
 …もしかすると…その方は…隣国に、居られるやもしれません。」
 「…隣国…あの、チャーミング国に…?」
 何故、彼女がーそんなところに…。
 …私は、トーリの言葉に疑問を抱きつつ、眉を潜めました。

 …銀色に輝く、月光のように美しい髪色。
 髪と同じく銀色の、涼しげで物静かな、その切れ長の瞳。
 薔薇を想わせる色の、濃い桃色の唇…。

 自分で言うのも何ですが… 
 (…何せ、ナルシストなものでして…(キリッ)!)
私は稀の、イケメンの部類に入る…と、思っております。
 母上よりも父上に似たその容姿は、大帝国随一と言われるほどに、美しいもので…
 ーって!!!!
 何を自慢げに、自分のことを話しているんですか!!
 ーと、私は、自分で自分に突っ込みを入れました。
 幾らなんでも、今のは…!   
 ナ ル シ ス ト す ぎ る!!
 一体何処(どこ)まで…自分のことが好きなのでしょうか、私は…?
 ーさぁ?
 そんなしょうもないこと、知りませんよ…!
 と、もう1人の私が、自分自身に向かって、心で呟いています。
 はぁ…と自分自身にため息を吐く私を、トーリが何を思ったのか、軽く睨んできました。
 「…それにしても…アレン様も、アレン様ですよ!
 その人のことを、
"彼女"
としか呼ばずに…。
 僕にすら、その正体を打ち明けてくれず…。
 それなのに、彼女を探すことを、毎日毎日、命じるんだから!」
 確かに、そうですね…トーリの言葉に、私も頷き返します。
 …そろそろ、私もー自分のことを、信頼しているトーリに打ち明けても良い頃かもしれません。
 否、きっとこれは、打ち明けるチャンスに違いない!
 私の本能が、そう告げていました。
 「…トーリ、これは信じても、信じて貰えなくとも構いません。
 …私はーいや、《俺は》…。
 日本という国から来た、
"転生者"なんです。
 本名は、柊山 爽斗
 (ひいらぎ そうと)。
 ー長年に渡り、ある方に仕えてきましたー"彼女"に…。」
 「…アレン様、も…僕と同じような立場だったのですか!?
 その…ニホン、とやらで…?」
 トーリは案外、私の言葉を、信じてくれているようです。
 やっぱり、仲間は良いものですね…!
 いや、もしかすると本人からすれば、私のことは、  
 「主人」
や、
 「友人の1人」
 …としか、思っていないかも知れませんが…。
 …と、その話しはまぁ、置いておいて…。
 ーもう1人の自分が、心の中で、
 さり気無く、都合の悪いことから話題を戻すな!!
 と反発してきましたが…。
 何のことでしょうか…?
 ーと、無視させて貰うことにして…。 
「…ええと…いえ、俺は、侍従でなく、一介の 執事としてー専属 執事として、務めておりました。
 10年間かけて、ずっと…。
 …"彼女"の…美氷 お嬢様の…。」
 俺が探しているのは、美氷 お嬢様のことなのです…。
 と、話を簡潔に締めくくり、不満げなトーリに向かって、私はニコリ、と笑みました。
 「いやいや、ニコって!
 王子様スマイルで微笑まれ、押しきられても、困ります!!」
 ア レ ン さ ま…?
 僕に、きちんと、ご 説 明 を!!!!
 トーリがだんだん、鋼のように冷たい声音になり、私を睨んできました。
 「…今、説明した通り、なのですが…?」
 それが何か、問 題 で も?
 私も、ポーカーフェイスでー無論、目だけは彼を睨み付けてー尋ね返します。
 …じっと睨み合っていた、その時でした。
 「………やはりーお前も、転生者、だったんだね…!
 子爵 子息
アレン殿!
 ー否ー爽斗?」
 何もない天蓋の窓から、不意に、威厳のある声が聞こえてきたのです。
 まさにー突然の来訪者、と呼べるに相応しい、来訪の仕方でした。
 何者かと、咄嗟に魔剣 (これには、緑色の魔宝の石がはめられています。
 自分達の家の侵入者をなぎ払うことも可能な、いわゆる、
 魔法アイテム
でございます。)
 を、部屋の上空へと向けた、トーリが…その人物が身に付けているマントを見て、声にならぬ声を漏らしました。
 エメラルド色の布地に、金色の竜の紋が彩られた、そのローブ。
 …それは、此処、エメチャル大帝国では…皇帝その人しか、着てはいけないものだったからです。

 …つまり、今ー
 今、私の名前をー前世の時の名前を、呼んだのはーいや、呼ばれたのは…。
 「…皇帝…陛下…!?
 何故此処に…いえ、それよりも!
 あなた様こそ…私の前世のー」
 爽斗だった時の、雇い主ー旦那様では…?
 空に向かって、大声で叫んだ、私の問いに。
 巨大な竜に乗ったまま、皇帝陛下は、こう尋ね返してこられたのです。

 「…もし僕が、遥か前世で、君の主(あるじ)だったとして…。
 ー僕が探している人が、君と同じだ、といったら…協力してくれるのかな?」

ー彼の言葉に、私は身を乗り出して、問い掛けました。
 「…それは、どういう意味でございましょう?」
 …と…。