ー2章ー
ーさぁ、なき虫 シンデレラを更正するレッスンを、始めましょう…!ー
ーそれから…私が、エラさんの泣き虫を直すため、彼女を鍛えると、宣言してから…。
早いもので、2週間ー14日が経って…。
「…傷を癒して、
To heal
(トゥー ヒール)!」
私は、メソメソと泣き続けるエラさんの身体に刻まれた傷に、自分の杖を向けていた。
パアア…!
途端に、所々晴れ上がった赤い傷に、明るい黄緑の閃光が放たれ…
「…あら…?
傷が、治って…全く痛くない…ぐすっ、ですっ!」
その光が、消えた時ー。
エラさんの傷は、跡形もなく消えていた。
といってもこの傷、私が転生した、ルリアの義母と、もう1人の彼女の姉ールリシアによって、付けられているんだけど…。
(…だけど、エラさんがそこまで泣く程は、付けられていなかったよね…?)
傷を癒せる魔法を掛ける前の、エラさんの掠り傷を思い出し、私は心の中で、もう1人の自分に尋ねてみた。
すると…返ってきた答えは。
ええ、多分…いいえ絶対に、かすり傷でしょうね!!
というか、そもそもの原因って…。
義母と姉相手に、エラさんがめそめそし、何も抵抗しないのが、いけないんじゃない?
ーという、エラさんに対して、結構辛辣な応答。
(…うーん、まぁ…。
そう言われてみれば…)
私も、その通りだよねと、その心の声に頷く。
ー今から約、2週間前ー。
私は、
「美氷」
という名前を一端忘れることにした。
そして、本格的に、シンデレラーつまり、エラさんの、義理の姉の1人、
「ルリア」
…に、成り済ますため…
自分自身に、魔法の杖で、
「変身 魔法」
を掛けた。
だって、いきなり、超絶美少女が家の中にーしかも、ルリアの変わりに現れたらーエラさんの義母も、もう1人の義姉(ぎあね)も…私を見て、必ず戸惑うだろう。
もしかすると、まだ子供の姿の私を、何処かにー大金持ちの家にでも、売り飛ばすかもしれない!
…と、私が、最悪の事態を考えてしまったからだ。
(それに…。
この姿の方が…エラさんを鍛えるのには、彼女の刺激になりそうだし…。)
本当は、美少女のままで居たかったのだけど…。
ため息を吐いた私は、頭を振って気持ちを切り替える。
…今は、自分のことじゃなくて…この泣き虫 エラさんーシンデレラさんを、鍛えなくちゃ…!!!!
そして視線を、エラさんに移すと…彼女は呆然と、傷の癒えた自分の身体を、凝視していた。
「…ふふっ、私が、魔法で治したんです!
…それより、エラさん。
他人の前ではーお母様やルリシアお姉様
(ーもう1人の、エラさんのお義姉さんの名前)、そして私。
ーいいえ、あなた以外の他人の前でも、直ぐにめそめそするのも、止めるように…!
…って…。
私、昨日も、一昨日も、その前の日も…。
あなたに散々、言ってませんでしたっけ…?」
…言っていました、よね…?
私はジトリ…と、彼女を睨み付ける。
ルリアの顔でーあの、不格好だけど、凄(すご)んだら凄い
(本人が居たら激怒すると思うけどっ!
それはもう、色々な意味で…!)…顔で、目を細めて。
「…ヒイイイイッ…!
今すぐ、実践しますぅ…!」
更に私に杖を突き付けられたエラさんは、又、魔法の光が、それから炸裂するのをーそれをさせる私をー明らかに、恐れているみたいだ。
(…少しは…ましかな…)
まぁ、きっとまだ…、
時間が掛かるだろうけど…。
えっ、何故か、って?
だって彼女、そう言いながら…。
明らかに、その綺麗な目に、大粒の涙を溜め始めているんだもん!!
(…やっぱり…全然、ましじゃなーいっ!!!!)
………もう、限界っ!!
苛々が募ってきた私はー言うことを聞かないエラさんに、再びー素早く、杖を向ける。
「ヒイッ、止め…!」
止めて下さいと言いながら、ジリジリと、汚い部屋の後ろに下がるエラさん。
…ごめんなさいっ、エラさん、神様ー!
私の怒りはもう、抑えられません…!
「…罰としてー
動作を静止せよ!
Stop the movement
(ストップ ザ ムーブメント) !」
ビシューンッ!
私の作り出した呪文に杖が反動し、今度は黄色の霧を出し…。
モヤモヤとしたそれは、後退するエラさんを、ためらいもなく覆った。
「………!?」
後には、動きを止め、喋ることも出来なくなった、エラさんの姿だけ…。
目を見開いたまま固まって、私を見つめている。
私が産み出したのは、 「静止 魔法」…。
対象物を黙らせ、そこから動けなくする魔法だ。
…勿論、対象物ー人でも動物でもーの涙も、止めさせることが出来る。
「…今日のあなたの残りの仕事ー動物達への餌やりーは、私がやりますから…。
…一晩中そこで、反省していなさいっ!!!」
私は怒りに任せてそう叫び、納屋へと飛び出していくのだった…。

