「どうぞ、奥様。」
 …扉の向こうに居る私に向かい、
 「奥様」
と呼び掛けた、その声は…。
 先ほど、
 「シンデレラ」の名曲の一曲である、
「夢はひそかに」
を口ずさんでいた女性と同等のものだった。
 ーその声がした時…私の意思とは関係なく、自分の口が動いていた。
 「…お母様では、無いんですけれど………。
 …ええっと、入っても宜しくって…?
 …エラ…?」
 (…エラ…エラ…っ!?)
 自分で言った彼女の名前に、私は目を見張る。
 …この名前…どこかでー否、完全に、聞き覚えあり!!
 「…あぁ、ルリア 義姉様 (ねえさま) って…えええっ!?」
 ギィ…!
 重たそうな、イチョウの木で出来たっぽい、扉が開きー
 …私を出迎えたのは…
 
 ー所々が破れた、窶れた1着の パッチワークで出来た、仕事着 (にも見えるし…言い方がとても悪いけど、奴隷の服にも見えなくもない…) のような服ーそんなみすぼらしい格好をしたーううん、わざとされた、18歳くらいの、1人の女性。

 …淡いブロンドの髪、アクアマリンのような、水色の瞳…。
 どんな格好をしていようとも、可憐でいてパッと人の目を引く、端正な顔立ち…。
 ー今は
「シンデレラ」
と呼ばれる、美女ー
「シンデレラ」
の、物語のヒロイン (主人公) ーエラ。
 …上から見上げても、横から見ても、縦から見ても。
 …いや、何処から見てもー未来の チャーミング国 皇太子妃、その人だった…。