ー3章ー
ー中章ー
~この最悪な環境から、箒に乗って、飛び出して…
目的地は…隣国の森…!?
ルリア (=美氷 目線)~
「…っ、きゃああー!?
ほ、箒に股がって…そ、空を飛んでるぅ!?」
「…るる、ルリア!
あ、貴女、そんな顔では無かったはず、けれど雰囲気は…!
答えなさい、愛しい妹よ!
一体全体、これは、ど…どうなっているんですのーっ!?」
ー深夜 2時の夜空に、お母様とルリシアお姉様の悲鳴が、大きく木霊する。
「…あらまぁ、起きてしまわれましたか!」
当の私は、そんな2人の問い掛けには、お構い無し!
…というか、2人には申し訳ないけど…
「ー今は、そんな大声で、叫ばないでーっ!!!
でないと、私が魔法で眠らせた、エラさーいえ、エラが、起きてしまいますーっ!!」
ー約 3時間前ーつまり、午後 11時40分に、2人を連れ出した張本人ー私、ルリアこと、元 家政婦 昔は 超絶 お嬢様
(「超絶」
「お嬢様」
…って言葉、何回、強調するつもりなのよ!!!?
…って、もう1人の自分に、鋭く突っ込まれるけど!!
…でもでも!
私の前世の実家は…
ー本当にそのくらいの、大富豪だったんだもん!
ー《10年前》までは…っ!)
ー美氷 (みひ)は、彼女達」を押さえ込もうと、声を押さえながら、そう懇願する。
「「ま、魔法で眠らせた、ですってええぇー!?
…あんなに恐ろしいーあの方の、娘様を!?」」
お母様とお姉様は、余程驚いたのか、箒の柄を恐る恐る掴み、すっとんきょうな声を上げた。
ー今…元の顔ー整いすぎた、超絶 美少女
(いや、自分で言うのも…!
…おかしい、おかしい…!、のは、分かってるー分かってるんだけど、本当に綺麗だと思う…!!)
ーの容姿に戻した私は、今、旅の服装に着替えさせた、お母様と、ルリシアお姉様…
私が助けると決めた、大切な、優しい家族と、共にー
…壮大な夜空の上を、巨大な箒で飛んでいた。
…えっ、どうして、魔力の無い箒で…しかも、巨大な箒で飛んでいるの?って?
ふふふ…それは、勿論!
この私の 魔 法 の 杖!
ーに、頼ったから、です!
「…様、を付ける必要は、もうないですよ、お母様。
…だって、私達はー今日の内に、隣国に行くのですから。」
キッパリとそう言いきった私に、お母様とお姉様は、唖然として…
「…いやいやいや、いや!
ルリア…その口調は、ルリアなのよね!?
今、うち、幻聴でも聞こえてたのかな!?
あ、《あの》隣国に、い…行く…なんて!?」
ーと、ルリシアお姉様が、箒から両手を離さないまま、声を甲高くして尋ねてきた。
「ーええ、勿論!
私は、正・真・正・銘!!
お姉様の妹、ルリアですよ
(ー正直言って、転生して、性格とか、顔とか…が、少ーしだけ、色々変わっただけ!!
…だもんね!)…!」
そう答えた後…先程の彼女の言葉に、私は小首を傾げていた。
…ええっと…
『あの、隣国に、行くなんて』…?
それって一体、どういう意味ーっ!?
ルリシア お姉様の、焦ったような、態度から見て…隣国に何か、あるのかなぁ…?
まぁでも、何れは…。
お母様とお姉様、そして私の3人で、どこか遠くの国に、引っ越すつもりだから…!
だからきっと、大丈夫!!
ー私は、2人の前で箒に股がり、両足をぶらぶらとさせる。
…そして、エラさんー腹黒でどうしようもない、シンデレラさんーから逃れることが出来て、本当に良かったぁ…!
ーと、声にならぬ安堵を漏らした。
ー今から約 3時間前ー
午後 22時(=午後 10時) 55分。
『…この者に、快適な眠りを!
ー眠れ!
ーHave a good night's sleep for this person
(ハブ ア グッド ナイツ スリープ フォー ディス パーソン)!』
ー思案の末、エラさんを、今日から明日の夜にかけて、眠らせることにした私はー。
…彼女に向かって、魔法の杖ーこの頃何故か、杖に描かれている、黄金の竜みたいな模様が、広がってきたような…?ーを、振っていた。
ラララー♪
ルルルー、ルララー♪
杖から流れてきたのは、何時もの鮮やかな、光の閃光ではなく。
相手を良い眠りに誘えそうな、暖かなメロディーだった。
…うっ…
エラさんに、この
「睡眠 魔法」
をかけている私まで…眠くなってきた…。
『…ふわぁ、眠い…』
このまま、眠ってしまおうかなぁ…?
ーって、だめ!
…それは、絶対に駄目ぇっ!!
「ルリア」の不細工な顔で眠りかけていた私に、心にいるもう1人の自分が、すかさず突っ込んでくる。
…そうだ、寝ている暇なんて…少しもないっ…!!
…グー、グースカ…
エラさんが、下品な寝息を立てるのを見届けるとー
私は欠伸を噛み殺して、今度は、お母様とお姉様の部屋へと向かった。
『…部屋で必要なものを、収集せよ!
Collect only what you need!
(コレクト オンリー ワット ユー ニード)! 』
そして再び、杖を向けると…
フワッ、フワッ!
呪文の力で、お母様とお姉様に必要なもの全てが、空中へと浮かび上がる。
…そして…私が予め準備していた、廊下の中心に置いたトランクに…
ボトン、ガチャン!
大分と大きな音を立てながら、自動的に入っていった…。
(私は、それを見届けて、今度は…箒に魔法をかけて。
眠ったままのお母様とお姉様の体を、
『固定 魔法』
…で、箒に固定させて…)
ーそうして、荷物を詰め込んだトランクを、箒の後部にくくりつけ…
『えいっ!!
…しゅっぱーつ
(出発ー)!!!!』
かつて、エラさんと、4人で暮らした家を、振り返らずに。
隣国だけを目指して、空へと旅立ち…今に至る。
「…リア、ルリア!
もしかして、貴女が言ってるのって…あの森のことじゃない?」
スッ!
暗闇の中でも近くに見えてきた、所々道が開けた森を、お姉様が指し示し、尋ねてきた。
「…はいっ、間違いありませんっ!
…スピードを、上げるので!!
…しっかりと、掴まっていて下さいっ!!」
目的地を見付けてくれた、ルリシアお姉様に感謝しつつ、私はぐんぐん、箒の速度を上げていく…。
「ぎ、ぎええっ!」
とか、
「…きゃああっ、吐きそうっ!」
とか叫んでいる、お母様や、ルリシア お姉様の声も。
「…あれは…お嬢様!?」
空にいる私を見て、そう呟いている、1人の美青年の、その言葉も…。
ーこの後の少し先の未来で、私のとんでもない出自が明かされるのだ、ということも…。
(ー空の飛行が、こんなにも楽しいなんて…!)
ーいつのまにか、この飛行を満喫している、私の耳には…
ー届かない。
否、魔女になった気分で楽しく、周りが見えていなかったため…。
届くはずが、ないのだった…。

