ー3章ー
ーついに暴かれる、エラ
ー シンデレラ
…の本性ー
ー転生者、ルリア (= 美氷)の、大胆な決心ー
「…うーん…」
おかしい…っ!
ー1ヶ月経っても、半年が経っても…。
エラさんの泣き虫は、治ることがなかった。
…寧ろー余計に、酷くなってきている。
うん、おかしい…本当の本当に、おかしいよっ!!!!
…もうそろそろ、
「魔法を使って、泣かないように鍛えた」
ポーカーフェイスの効果が、エラさんに現れ始めて…少しずつ、意地悪な性格も、直る筈なのにぃー!!!!
これは、多分…。
いいえっ、どこから、どう見ても…!!
「…まさか…!
今の今まで、気付かなかったけれど…。
この泣き虫の態度。
それ自体が、エラさんの
…自作自演、だとしたら…?」
ここまで来たら、そういう可能性も…なきにしもあらず、ではっ!!!?
ーベッドに入り、うとうとしかけていた私ールリアーはそう考え、ガバッと身を起こした。
そういえば、今までそんな可能性すら、考えていなかった。
…万が一のため、エラさんには感付かれないよう、家の部屋中ーエラさんの部屋も含めてーに、杖で作った映像石
(…これを設置すると、その部屋で起こった出来事の一部始終が記憶される、というもの。
簡単に言うと…
監視カメラの 異世界バージョン!)…を、取り付け、一日中、彼女の動向を撮っているけど…。
今思い出してみたら…。
私はその映像すら、確認していないのではっ…!!!?
「…だって…!!
…エラさんなら、意地悪な所も治せるだろうって、思ってたもの…!」
私は、自分で自分に、苦し紛れの言い訳をする。
といっても、エラさんのことを信じていたのは…
100%のうち、たったの20%…まぁこのくらいしか、信じていないんだけどね!
ーって!
それ、エラさんのこと、ほぼほぼ、信じていないんじゃん!!
すかさず突っ込んでくる、もう1人の自分の声を、私は完全に無視!
そして1人、自分の部屋から台所へと出た。
お母様とルリシアお姉様、エラさんは、各々の部屋で気持ちよさげに熟睡している。
時計の針は、午後10時半を指していた。
「…あった、記憶石…!」
私は杖で、階段を作り出し、なるべく音を立てないよう、それに上る。
…えっ、どうして階段を上っているのか、って?
…何故なら、記憶石は、天 井 の 隅!に、設置していたから!
「…ちょっと重いなぁ…よいしょっと!」
記憶石は、一見部屋の壁の一部に見える、クリーム色の球体。
…トントントン!
私は寝ている3人ー特に、エラさんーが起きないか心配しながらも、少し音を立てて、記憶石を持ったまま、階段を降りる。
…そして、先程魔法で出現させた、木製の階段に向けて、杖を振った。
「…収納 魔法
…Things to store
(シングス トゥー
ストア)! 」
小声で呟いた途端、
パァ…!
杖の先から、静かに、しかし厳かに…
美しい精霊達が飛び出してきた。
サイズは、私ー7歳の女の子の、4分の1くらい。
エルフのような尖った耳。
艶々と輝く、金髪の髪。
濁りすら感じられない、透明な 水色の瞳…。
全員が全員、同じ容姿をしたその精霊達は、
〈ー全ては、主様のために!〉
私を見て、恭しくそう言うと…
(…ええっ、あ る じ さ ま…!?
それって…、もしかして、もしかしなくても…私のことおおおぉー!!!?)
内心で、アワアワとパニックに陥る私には構わず、一斉に、その小さな両手を机に向ける。
スウゥ…!
するとー木製で出来た、16段もある大きな階段が、あっという間に彼女に吸い込まれー消えていったんだ…!
「…凄いっ、有り難うございますっ!!」
消え行く精霊達に頭を下げ、何度もお礼を言う私。
ーーって、お礼を言ってる場合じゃ、なーいっ!!
…そんな私に、心の中の自分が、激しく突っ込んできた。
…今は、エラさんの動向を、記憶石からチェックする、最大のチャンスでしょうが!!!?
「…はっ!
そうだった…!」
私はもう1人の自分に感謝しーまぁ、感謝するのは、今回だけじゃ無いんだけど!ー両目を閉じるとー台所から回収した記憶石に、自分の両手をかざした。
こうすることで、より鮮明に、台所で起きた出来事が、分かるようになるんだ…!
ーそして…。
「…う…嘘ぉ…!
エラさんの、いじわるな攻撃ーじゃなくて、いじめ…。
…このままだと、酷くなる一方…なんですけどっ!?」
エラさんが、大きな石を、彼女の義母と義姉ー私にとっては、優しい家族ーに、投げつけているのを見て…
私は思わず、小さな悲鳴を上げる。
…うん。
ー鍛えれば、意地悪な所も直る筈!
そう気楽に考えていた私が、馬 鹿 だったよぉー!!!
人の性格なんて…そう簡単に、直るものじゃない。
「三つ子の魂百まで」
という諺が、あるくらいだしね…!
(…って、開き直ってる場合でもないっ!!)
このままだと…私は記憶をー残酷な、エラさんのいじめをー見ている両手をそれから離し、またまた…自分に突っ込む。
(…どうしよう…エラさんを、助けるつもりだったけれど…)
ここまで酷いことを、仮にも、「ルリア」に転生した私の家族に、していたなんて…!
…それを知ったら、もう…彼女を助ける気なんて、つゆ程も起きなくなった。
…私が、今、助けたいのは…
ううん、助けなければならないのは…!
エラさんに、暴力と脅しによるいじめを受けている、お母様と…そして勿論、ルリシアお姉様だ。
…2人には、申し訳ないけど…私と一緒に、この国から脱出して貰う。
うん、絶対に、この家から逃げないと…!!
ーかくしてこの日…。
…私ールリアこと美氷は、大胆すぎる決断をしたのだった…。
「…さて…
どうやって、エラさんの魔の手から、お母様とお姉様を…連れ出そうかなぁ…?」
記憶石を胸の中に抱き抱え、私はパタパタと、自分の部屋へと戻りながら…。
私は、中途半端ではない、真面目な決断を胸に、そう独りごちる…。
ーこうして…。
エラー王子と幸せになる筈の
「シンデレラ」
…は、ルリアから、見放されることとなった。
ーエラは、この後、自分の行動を、深く後悔することとなるのだが…。
ーそれはもう、転生した
「ルリア」
には、関係のないことであったー。

