お兄様をコテンパンにやっつけてごめんなさいと平謝りするわたしを、ルシードは苦笑しながら許してくれた。

「兄っていっても、僕は養子なので血は繋がってないんです。よくああやって僕のことをからかってくるんですけど、今日は妙にしつこかったから助かりました。ステーシアさんはさすがだな。いつも毅然としていてかっこよくてうらやましいです」

 ルシードが元は山賊に捨てられた孤児であることは、内密に調べたから知っていたけれど、それを本人には決して言うまい。

「もしかして、おうちでもイジメられていたりするの?」
 
 ルシードはふるふると首を横に振る。
「いいえ、ディーノお兄様以外はみなさんよくしてくれます。特に母は血のつながりのないはずの僕をとても可愛がってくれて、あのパーティーの日に着たスーツも、急な話だったのに急いで用意してくれたんです」

 パーティー当日の、ボサボサ髪をしっかり撫でつけていたあのヘアスタイルも、お母様自らが手がけたらしい。

 庇護欲をそそる性格な上にメガネを外せば美少年のルシードは、年上の女性全般にとても可愛がられるはずだ。
 おまけに一流の魔導具師になれる資質を兼ね備えている。

 母親が養子を可愛がりすぎて実の息子がひねくれちゃったパターンなのかもしれない。