円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語

 ウォーミングアップ、走り込み、木刀を持っての素振りでいい汗をかき、ランチタイムになった。

 騎士団の食堂の一角に固まり、肩を並べて実際に騎士団のみなさんが普段食べているものと同じメニューを食べた。

 体を動かす職業のため、昼でも肉料理が多いらしい。
 この日は、塩気がしっかりきいた厚切りのベーコン、キャベツの酢漬け、レバーペースト、ハード系のライ麦パン、ひよこ豆のスープ、柑橘ゼリーで、おかわり自由というメニューだった。

 ライ麦パンの真ん中を手で開くと、中にレバーペーストを塗り、ベーコンとキャベツを挟んでかぶりついた。

 ああ、体をしっかり動かした後の食事はなんて美味しいのかしら!
 しかも堂々とお行儀悪く、大きな口を開けてかぶりつけるだなんて、素敵!

 もぐもぐしながらふと隣を見ると、女子軍団は「ナイフはないのかしら?」とキョロキョロしながらベーコンをどう一口大に切るかで頭を悩ませている様子だった。

 騎士団の食堂ではそんな上品な食べ方なんてしないのよ?
 あなたたち、何しに来たの? 

 そう思いながら食べ続けていたら、次兄のスタンが食堂に入ってくるのが見えた。

「見て、スタン様よ。やっぱり、かっこいいわね」
「同僚の方と笑ってらっしゃるわ、笑顔も素敵ね」

 ―――っ!
 この人たちまさか、お目当ての騎士を間近で見たいがために体験訓練に参加しているの!?
 そりゃ、命がけのわたしと温度差あるわけだわ。