「王子?留学生に捨てられたあと、やっぱりヒロインが大切だって気づいて探し回るんだけど、時すでに遅しでヒロインと他の男が幸せそうに結婚式を挙げているのを見て泣くっていう『ざまあ展開』よ」

 ドヤ顔のリリーからゆっくりとわたしのほうへ視線を移したレイナード様の顔は青ざめていた。
 そして、親友たちが見ている前だというのに、お構いなしにぎゅうぎゅうと抱きしめてきたのだ。

「シア!そんなのダメだ!」

 いや、だから今の話はただの小説ですからね。
 落ち着いてくださいっ!

「これはステーシアちゃん、苦労しそうだなー」
というカインの呆れた声と、
「次の小説は、婚約破棄した馬鹿王子が心を入れ替えてもう一度ヒロインに振り向いてもらうために奮闘するっていうストーリーにしようかしら」
というリリーの弾んだ声を聞きながら、レイナード様をなだめ続けたのだった。