パチパチと薪が弾ける音が聞こえる。

 瞼を開けると、視界がクリアになるまでしばらく時間がかかった。
 音のする方向に首をひねると、焚火を囲んでいる大きな体の男の姿が見える。

 ボサボサのダーググレーの頭髪とヒゲは、生まれ持っての色なのか、汚れでその色になっているのか区別がつかない。
 衣類も、袖口がギザギザに破けている様子からして年季の入ったものを着ている様子だ。

 ここが天国か地獄かと言ったら地獄寄りなんでしょうね…。
 だけど、この男の所属先は天国でも地獄でもなく、おそらく山賊だわ。

 意識がはっきりとしてくると同時に、背中と肩が痛んだ。
 地面に直接むしろを敷いて、その上に寝かされているらしい。 
 まるで厩のような粗末な小屋の中にいることも確認できた。
 小さな窓から見える外の景色は薄暗い。

 いきなりガバっと起き上がると、この男が驚いて攻撃してくるかもしれないから、まず声をかけようと思ったのだけれど、口の中がカラカラで掠れてしまった。
「……あ…」

 男はそれに気づいて、体を横たえたままになっているわたしの顔を覗き込んできた。
「おう、目が覚めたか、嬢ちゃん」

「…み…ず…お水もらえませんか」

「わかった、汲んできてやるから待ってな」
 男はニッと笑うと小屋を出て行った。

 あら、意外といい人ね、よかったわ。

 体を起こそうと足を動かして、ブーツを履いていないことに気づいた。

 ええぇぇぇっ!
 カモちゃんは!?