「もう!最悪!!」


朝はカラカラに晴れていたのに、仕事終わりで有る夕方には小雨がシトシトと降っていた。


まあ、多少濡れても平気だと思いパーカーのフードを被って走り出したのが10分前。
雨は段々強さを増し、灰色のパーカが雨によって所々変色している。


馬鹿な私でも、家に着くまでにびしょ濡れになる事が予測出来た。
前髪には拘っている私だが、雨のせいで髪が額に張り付き情けない姿になっていると想像するだけで今にも泣き出しそうになってしまう。


近くのコンビニに入り、傘を買おうとしたが売り切れ。
今すぐにでも泣き出しそうな気分になりながら、コンビニを出ようとした瞬間、真後ろから声が聞こえた。


「傘売り切れだったでしよ?」


声の下方向に振り向くと、やたら身長の高い顔の整った男が立っていた。


切れ長なアーモンド型の瞳に、高い鼻。
なのに、唇は程よい厚みが有ってどこか優しそうな雰囲気を醸し出している。


一目惚れなんて存在しないと思っていたのに、彼の顔から目が離せない。


しかし、ふと雨でボロボロになった自分の顔を想像して恥ずかしくなった。


目を逸らした私に、再度話し掛けて来た彼。