木葉ちゃんと一緒に帰る放課後、わたしは鼻歌が止められなかった。


「ふふ、ほんとにうれし~」


 あれから、一悟くんとお昼を共にしている。そして、これからも共にできる。


 少し一緒にいられる時間が増えただけなのに、心が弾んで仕方ない。


 わたしと有明くんに挟まれてお弁当を食べる木葉ちゃんは、毎回ずっと下を向いているけど。


「集団で頼んできて卑怯だったんだけど、自覚ある?」


 ツンとした物言いで返してくる木葉ちゃんを、わたしは下から覗き込んだ。


「次の目標は四人で一緒に帰ること、かなぁ~?」


 ここまで来たからには、もうちょっと頑張ってほしいな~?


 と、期待に満ちた瞳で見つめてみる。



「――なに言ってんの。次の目標は、期末テストでしょ」



 だけど木葉ちゃんは冷ややかな声で、わたしの提案をバッサリと切り捨てた。


 ただし、瞳は灼熱に燃えていた。


「あたしは夏休みに賭けてるの」

「何を?」

「絶対に彼氏を作る!」

「え~? 有明くんは?」


 てっきりそういうことなんだと思ってたんだけどなぁ。


「なっ、有明は、違うっていうか……! その……とにかく、違うの!」


 そういうわりには、しっかりと動揺している。


 まぁ、木葉ちゃんの気持ちは木葉ちゃんにまかせるしかないよね。


 それにしても……そっか、夏休みかぁ~……。


 赤点は取ったとこないから、今回もテストはゆるーく頑張ろうかと思ってたけど。


 一悟くんともいっぱい遊びたいし、今回はいつもより頑張った方がいいのかなぁ。