放課後になるなり、バイトだからと逃げるように帰っていく木葉ちゃんの背中を目で追う。


 ほんのちょっと素直になったかと思ったのに、気のせいだったかなぁ……。


 わたしはといえば、一悟くんのお家に案内してもらうための有明くん待ちだ。


 廊下で有明くんが来るだろう方向を見ていたら、それらしい人影が近付いてきた。


 わたしは手を振って自分の位置を目立たせる。


 すぐに気付いてくれた有明くんの表情は、なんだかとっても疲弊しているように見えた。


「有明くん、お疲れだね?」

「ちょっと、人を撒くのに苦戦してしまって」

「大変だねぇ」


 いつもこんな感じなのかな。


 お昼のとき見た限りじゃ、みんなとお話するのはあんまり得意じゃなさそうだったかも。


 苦手なことを頑張るのは疲れちゃうよねぇ。



 校舎を出てから、わたしはスマホを取り出す。


 こういうときは、やっぱり癒しだよね。


「わたしの癒しフォルダ見る? 可愛い犬がいっぱいだよ~」

「犬か……」

「……あ、もしかして猫派かなぁ?」

「え、どうしてわかったんだ?」

「だって今、犬って聞いてガッカリしてたよ~?」


 それに、木葉ちゃんにも猫を重ねてたし……?


 結構露骨に出てたのに、本人は無自覚だったらしい。


 残念ながらわたしのスマホには猫の画像はない。


 木葉ちゃんとの写真ならあるけど……これを見せるのはよくない気がするよ。