「……な。なに連れてきてんの」

「せっかくだからね~」

「ばか! あほ! 頭お花畑!」

「効かないよ~」


 吠える木葉ちゃんを無視して、わたしの机を囲むように有明くんの席を作る。

 
 木葉ちゃんは座ってくれなくて、遠くの位置からわたしを睨んでいる。


「それでね有明くん。わたし、一悟くんのお見舞いに行きたいなぁ~って思ったから、お家の場所教えてくれないかな?」

「あぁ、そういうことか。えっと……いいのか? 彼女は」

「あ、大丈夫大丈夫~、気にしないでね?」

「そう言われてもな……」


 有明くんは木葉ちゃんの存在が異様に気になるようで、わたしとの会話に全然集中してくれなかった。


 もう。木葉ちゃんが有明くんと仲良くしてくれたら解決する話なのに。


 わたしは立ち上がって、木葉ちゃんの元へ歩み寄る。


 そして、両手をがっしりと掴んだ。


「木葉ちゃん! こっち来てっ!」

「やだ!」

「やだ禁止っ! もぉ~、有明くんも手伝って~!」


 有明くんに助けを求めると、少し戸惑いながらもこっちに来てくれる。


 逃げ出そうとする木葉ちゃんはしっかりと固定。


 有明くんの姿が近付いてくるのに合わせて、木葉ちゃんの瞳が潤んでいく。


「有明くん、今の気持ちをしっかりと伝えるんだよ!」


 有明くんからの言葉なら、効くかもしれない!


 わたしの叫びに有明くんは右往左往しつつ、最後にこっちを見て苦笑した。
 

「あー……そう、だな。さすがに俺も、そこまで避けられたら少し傷付いているかもしれない」

「んなっ……!?」


 木葉ちゃんが驚き声を上げる。