羽入さんは時々、艶やかな表情をしてくるから困る。


 普段はふわふわ癒やし系なのに、たまに覗く色気がドキッとさせてきて……健全な男子高校生として非常に苦しい。


 可愛いだけじゃないなんて、最強すぎる……っ。


 一年前はこんな日が来るなんて思いもしなかった。


 一方的に見てるだけだった羽入さんの瞳が俺を映している。


 そして、ちゃんと俺だと認識して笑いかけてくれる。


 もっと、俺をどんどん虜にして抜け出せなくしてほしい……。


「羽入さん……すき……」


 無意識に漏れ出た想いを、彼女は笑顔で受け止めた。


 でも、「わたしもだよ」とはまだ言ってもらったことがない。


 胸が切なくなるのに気付かないふりをして、もう一度「大好き」と唱える。


 羽入さんにも早く俺のことを好きになってほしい。


 ……だけどそれは強欲すぎるのだろうか。



 いつの間にか俺達は駅に着いていて、別れが迫っていた。


 これが終われば、また一週間後……。


 とてもじゃないけど大人しく待てができる日数だとは思えない。


「お別れ、だね~……」


 羽入さんも俺の腕を解放して、別れの準備をしている。


 ああ……もう少し一緒にいたかったな。


 俺も定期を取り出して、改札を通ろうと足を進めると、