それから俺は羽入さんのことを調べた。


 保健委員の羽入さんと聞いて回ったら、彼女の正体はすぐに判明した。


 羽入めるさん。俺と同じ一年生の、とんでもない美少女だった。


 全体的にふわふわしていて、見ているだけで癒やされるような人。そして俺は、彼女の癒やし効果が見た目だけではないことを知っている。


 隠れファンは多いけど、告白が成功した例はないらしい。


 美人の友達とよく一緒にいて、二人のことを一部からは『高嶺と花』と呼ばれている。羽入さんは、花担当。


 でも確かに、花のような人なのだ。


 見ているだけしかできないけど、それで十分満たされていた。俺も、ただのファンの一人に過ぎない。


 どうせ告白したってフラれるだけなのだから、それでいい。


 ――そのときは確実に、そう思っていたのだ。



 考えが変わったのは一年後。二年に上がって羽入さんと同じクラスになれたときだった。


 毎日同じ教室に彼女がいる。彼女の顔がたくさん見られる。彼女の声がたくさん聞ける。


 そんな事実が起こり得てしまって、俺の脳内は混乱していた。


 羽入さんが笑っている――可愛い。


 羽入さんがお昼を食べている――可愛い。


 羽入さんが歩いている――可愛い。


 彼女の挙動一つ一つにいちいち反応してときめいて、俺はだんだんと正常な判断を失ってしまったのだろう。


「羽入さんのことが、ほしい、です」


 あろうことか考えなしに、告白してしまったのだ。