とはいえ……


「覚悟しといてとか言っておいて、だんだん自信なくなってきて……」

「そうだねぇ。ドキドキっていうのは、あんまりしたことないかも」

「えっ!?」


 一悟くんの顔色がサァッと青くなる。


「でも、わからないよ? 一悟くんにならするかも」

「うぅっ……」


 どうやらさらに自信をなくしてしまったみたいだ。


 そんなに心配しなくても大丈夫だと思うんだけどなぁ。


 一悟くんの自然体でわたしに伝えたいって言葉を言ってくれれば、わたしはそれだけで嬉しいのに。


 うん。ただそれは、わたしの言葉不足でもあったかも。


 一悟くんに体を向けると、ふわりとワンピースが広がる。


「わたし、一悟くんの目が好きだよ」

「好……っ、え、目?」

「一悟くんの目はね~……わたしのことが大好きなんだってずっと言ってくれてるから、好き」


 真っ直ぐ見られる機会はそんなに多くないけどね。一悟くん、すぐに目を逸らしちゃうから。


「目……。俺、そんな目してたんだ……」

「してるよ~」


 まさに目から鱗だったのか、一人言のように呟いて……わたしと目を合わせる。


 ……やっと見てくれた。


 わたしの心は揺れ動いていて、じんわりと暖かな気持ちが流れ込んでくる。


「……よし」


 少し強引に腕を引っ張ってくる一悟くん。


「行こう、羽入さん!」


 吹っ切れたように満面の笑みを浮かべ、わたしの名前を呼んでくれる。


 なんだか、一悟くんの周りがチカチカと光った気がした。