「は、羽入さん! い……行こうか!」


 でも、それを確認する前に肩を掴まれた。そして強引に店の外へ運ぼうとしてくる。


 ……怪しいねぇ。


 隠すような素振りをされれば、余計に見たくなるだけだ。


 わたしは意地でも見ようと抵抗する。


「一悟くん? 一体何を見てたのかなぁ~?」

「みっ、見なくていいよ! ほんとに! 見ないで!」


 そうやって言われたら見たくなっちゃうのが、人間ってものだよねぇ~?


「これかなぁ~?」

「わああっ!」


 隠したがっていたであろう本を手に取って、タイトルを読み上げた。


「『彼女をドキッとさせる言葉100選』……?」


 一悟くんが湯気を出すかのごとく真っ赤になった顔を手で押さえる。


 わたしは一気に罪悪感が押し寄せてきて、黙って本を置く。


 同時に、なぜか頬が熱かった。


「……何も見なかったことにして行きませんか?」


 一悟くんが指の隙間から目を見せて言う。


 今度こそ外に連れ出されて、本屋さんの前で立ち止まる。


 決まりが悪そうにしている一悟くんをちらりと見上げた。


「一悟くん、わたしをドキドキさせたいの?」

「見なかったことにしてって言ったのに……」

「だって……」


 見なかったことにするのはもったいない気がしたから……。


 でも、本で学ぼうとしたのはいただけないな~。


 わたしをドキドキさせたいなら、ちゃんと実践しないと。